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物流を対象とした3PLスキームの抜本見直し支援事例
新生3PLとは何か
― 化学メーカー事例と7つの成功パターンから導く、次世代ロジスティクスの再定義
◆ はじめに:物流の“標準解”が再定義される時代
「3PLは導入している。しかし、物流は改善されたのか?」
この問いに即答できる企業は、実は多くありません。
- コストは削減できたが、倉庫や輸送ネットワークは手つかず
- KPIはあるが、3PLに任せきりで自社には実感がない
- 幹線輸送・集約・共同配送などの構想は実行されていない
こうした現状に対し、私たちは「新生3PL」という構想を提言しています。
これは、導入から数年が経過した3PLスキームに対し、再定義・再構築を前提としたアプローチです。
本稿では、2024年に当社が支援した大手化学メーカーの物流戦略プロジェクトを中心に、
過去に実施した7件の成功プロジェクトと比較しながら、「次の3PLのあり方」を詳しく解説します。
◆ 事例:大手化学メーカーの3PL再構築プロジェクト
▶ プロジェクト概要
- 企業規模: 売上数千億円の化学品メーカー
- 期間: 2024年1月~2024年12月
- 領域: 全社物流の3PL/LLP再設計
- 目的: 既存3PLスキームの抜本刷新と成果報酬スキーム再構築
▶ 抱えていた課題
2018年の3PL契約導入から約5年。
物流費は年間数百億円(うち国内は半分)にのぼり、数十億円相当が3PL委託範囲として存在していました。
しかし、次のような構造的問題が明らかになりました。
- 全国200拠点の倉庫が点在し、機能重複と非効率が散見
- 事業所から顧客への直送が90%近くを占め、幹線輸送の整備が進んでいない
- 営業倉庫は100拠点あるが、出荷転送率は一部で、営業支援目的に偏重
- 貸切便でも積載ばらつきが多く、コスト効率が低い
- 過去のコスト削減の多くは大手路線便ベンダーとのタリフ見直しによるもので、構造改革には至っていない
“導入はしたが、構想したネットワークや輸送モデルは現場で機能していなかった”
― これは、多くの企業に共通する「3PL導入後のリアル」でもあります。
▶ 当社のアプローチ
1. 物流の実態把握とマッピング
- データの粒度と整合性に課題があったため、製品特性・輸送ロット・物流形態をヒアリングと照合
- ExcelやPDFのサマリーベースではなく、独自マスタによる統合DBを構築
2. 3PLの現行運用と他社比較
- 現行のKPI設計・運用実態を棚卸し
- 過去支援した3PL導入企業(複数社)からベンダー担当者へヒアリングを実施
- 「導入後5年以上経過したプロジェクトの現在地」を共有
3. 物流ネットワークの最適再構築案
- 幹線輸送の導入シナリオ、戻り便の活用、営業倉庫の役割再設計
- 共同配送・地域集約型のモデル検討(ベンダーとの交渉可能性も含む)
4. 新たな委託モデル・成果報酬スキーム構築
- タリフ中心の契約から、成果連動型の契約モデル(KPI×報酬)へ
- SLA設計を含む、3PL評価・運用フレーム策定
▶ クライアントの声
「物流会社の意見は聞けるが、他荷主の取組みは得られない。今回、客観視と比較評価ができた」
「慣習に流されてきた社内物流を、データと事例で可視化してくれたのが大きかった」
◆ 新生3PLの設計とは?
項目 |
従来型3PL |
新生3PL |
スコープ |
工場/事業部単位 |
全社ネットワーク視点 |
契約形態 |
タリフ型(単価・ボリューム契約) |
成果報酬型(KPI/SLA設計) |
運用モデル |
各拠点個別最適 |
幹線+地域集約型ハイブリッド |
倉庫運用 |
機能重複・非活用 |
集約/役割分担と稼働率設計 |
データ活用 |
観察的可視化 |
可視化×運用×フィードバックの仕組み化 |
◆ 比較:他7社プロジェクトと見えた共通成功要素
当社はこれまで、3PL導入・再設計プロジェクトを30件以上支援してきました。
以下はその中でも代表的な7事例の要約です。
# |
業界 |
背景 |
規模 |
主な成果 |
1 |
小売 |
カーブアウト後の再構築 |
3億円 |
PB対応DC/週2配送化/KPI運用 |
2 |
食品 |
倉庫・輸入業務の可視化 |
4億円 |
一括委託化/賞味期限管理自動化 |
3 |
化学 |
工場間の物流統合 |
50億円 |
統一KPI/幹線輸送再設計 |
4 |
化学 |
全社物流の統合失敗の再挑戦 |
500億円 |
子会社廃止/契約統合 |
5 |
医療機器 |
BCP対応強化 |
35億円 |
東西BCP倉庫/クロスドック配置 |
6 |
精密機器 |
グローバル輸送費抑制 |
500億円 |
Air↔Ship最適化/NW設計 |
7 |
石油加工 |
4PL導入と社内人件費削減 |
15億円 |
仕入先VMI/4PL統合体制 |
▶ 成功プロジェクトに共通していた4つの視点:
- 物流を経営課題として定義し、全社視点で取り組んでいた
- 契約に成果報酬の視点を取り入れ、ベンダーとの関係を再設計していた
- KPIやSLAを自社で設計・運用可能な体制を構築していた
- 他社事例との比較で「自社のあるべき姿」を定義できていた
◆ 当社の強み:10年以上続く3PL変革支援の実績
- 導入から実行支援、契約再構築まで一気通貫で対応
- 「3PLは導入後にこそ支援が必要」と考え、再構築事例多数
- ベンダーとの対話・交渉を含む、実行に強い支援体制
◆ 結び:3PLの“導入”から“戦略活用”への進化を
今、多くの企業が「3PLを導入したが、活用しきれていない」と感じています。
物流は、コストではなく“戦略の武器”になり得る。
そのためには、「現状の正しい把握」と「次の姿の構想」が不可欠です。
▶ 貴社に最適な3PL構想とは?
まずは無料の初期診断からご相談ください。