ブログ
オフショア開発でのパートナー選定の過程
※前回記事では、当社がオフショア開発に移行する経緯をお話しました。
初めてオフショア開発を導入する上で、何より重要なこと。それは、現地でのパートナー選びであることに他なりません。取組が失敗するか成功するかはこれで決まるといっても過言ではないでしょう。
もちろん、現地法人を自前で立ち上げという選択肢もあります。後述いたしますが、現地事情を何も知らない段階で、いきなり現地法人を立ち上げて、現地の人材を採用する、というやり方は現実的ではありませんでした。
当社がベトナムでのオフショア開発体制を導入は、最初から意図していたわけではありません。幾つかの縁が折り重なって導入に至った経緯があります。
ある時、当社代表が、知人でベトナムホーチミンにある技術系の大学で講師をしている方から、当社運営メディアや、日本でのベンチャービジネスについて大学に来て講演をしてくれないかと依頼されたのが最初のきっかけです。
また、ちょうど同じような時期に、日本の会社から、ベトナムでのオフショア開発サービスについて案内もされていました。
そのサービス内容は、現地事務所でベトナム人エンジニアを専属アサインしてもらい、当社からも現地にプロジェクトマネージャーを置くことで、ベトナムに「ラボ」型の開発チームを構築する、というものです。自社法人を立ち上げることなく、現地に開発チームを構築できる、という点が魅力的でした。
この時、ホーチミンに訪れた際には、現地法人も見学させて頂きました。アクセスの良い立地に、立派なオフィスを構えていて、内装もとてもオシャレでした。たくさんのベトナム人若手エンジニア達が、ダブルモニターを構えて黙々と働く様子にはとても新鮮でエネルギッシュに見えました。
サービスの柔軟性が一番の決め手になりました。
結論から言いますと、当社がパートナーシップを組んだのは、そちらの日系会社ではなく別のベトナム現地のオフショア開発会社でした。その一番の理由としては、
選定した会社の提案サービスが、
アウトソーシング型(サイトの全体保守と一定範囲の開発サポート)と専属チーム型(当社専属人材を採用し、フルタイムで当社開発をサポート)の両方の委託形態が柔軟に選択可能だったこととが大きいです。
当時、当社は下記ような状況でした。
- 当社としては、全く初めてのオフショア開発導入だった
- 体制、予算ともに出来るだけ小規模でのトライアルスタートがしたかった
社内人材から現地に管理者を派遣する人的余裕がなかった
当社では、技術担当メンバーが不在という状況でしたので、ベトナムに誰かを派遣する、という選択肢は現実的ではありませんでした。
開発業務を外部委託するようなイメージで開発作業管理は基本パートナー側に実施してもらいつつ、予算の許す範囲で当社専属メンバーをアサインしてもらうことで、こちら側の管理負担を抑えつつも、できるだけ自社開発チームに近い体制を構築したいという、わがままなニーズにマッチしたのがこの現地会社でした。
もう一つの決め手は開発経験の豊富さです。
もう一つ、パートナーを選ぶに上で重要なポイントとなったのが、彼らの開発品質・体制への信頼です。
・10年前から、ベトナムでのオフショア開発ベンダーとしての豊富な開発経験を持っていたこと
・主なクライアントを欧米に持ち、世界標準レベルの開発品質を要求されていること
・開発はアジャイル・スクラムを採用し、開発プロセスの継続的育成を行っていること
当社は長い間、社内に技術チームが存在していなかったため、サイトのシステム自体に加え、技術のことや開発の手法といった分野において、情報不足・遅れの心配がずっとありました。
このプロジェクトを通して上記のようなパートナーが持つ特性を学び、吸収していくことで、当社の社内における開発力強化にも繋がるのでは、と期待しました。
しかし懸念事項として言語の壁が立ちはだかりました。
唯一懸念だったのは、そのパートナーは日系の会社ではなかったため、コミュニケーションが全て英語で行われることでした。日本語ドキュメンテーションはそのままでは通じませんので、英語化が必須となります。また、全てのコミュニケーションも英語で行う必要があります。
しかし、これからの時代、日本の中で閉じて戦うことはどんどん難しくなるとともに、国の壁を越えたチームビルディングも当たり前になるはずです。この困難は逆に、今後当社の強みになるのでは、と考えました。
そもそも、開発者のベトナム人達はもちろんのこと、パートナーの代表もヨーロッパ出身であり、英語が母国語ではないメンバーという点では皆、対等なのではないでしょうか。
日系の会社であれば、日本人現地社員を初めとする、日本語サポートも非常に充実しており、こちらであれば、言語面でも不安はほぼないように思いました。ただ、今後、当社のオフショアプロジェクトのスケールが拡大するほど、遅かれ早かれ必ず言葉の壁はやって来るはずと考え、それなら最初からその壁に挑戦しようと決めました。
現地で直接人材を雇用することの難しさ。
さて、現地法人を通じて、自社で人材を確保する方法を当社が採用しなかった経緯についても紹介しておきたいと思います。
現地で建築用3Dモデリングのアウトソーシング会社のカントリーマネージャーをしている方にお会いした際に、現地での直接雇用についてご相談しました。
「自分の周りにもベトナム現地人材を採用して、
『開発をやってみたが、大失敗だった。彼ら(ベトナム人)の仕事のやり方には参ったよ』
なんて言っている友人がいたが、話を聞いてみると、ベトナムに来るのは月に1度あるかないか、と言う。そんなやり方でうまくいくはずがない。こちらの人は人と人との関係性を何よりも重視するんだ。」
「君が現地にしっかりと張り付いて一緒に働くくらいじゃないと、現地で人を雇うというやり方は決しておすすめしない。まずは、パートナーを見つけることがベストだと思うよ。」
とはっきりと教えてくれました。あまりに正論かつ、たくさんの失敗事例を見ている方の言葉だけに、ここで現地法人の選択肢はなくなりました。もう少し経験を積み、現地事情、何よりベトナム人のことをもっとく深く知ってから、再度考えようと決めました。
まとめ
最後に、当社が採用した主なパートナー選定の基準をまとめておきます。
1.委託の形態を予算・体制ともに柔軟に決めることができるか
2.パートナーの開発経験は十分か、またどのような開発プロセスを採用しているか
3.パートナーのクライアントは主にどこの国が多いか(IT先進地域かどうか)
4.開発者の作業・品質管理をパートナー側に任せることができるか
その他:
現地に訪れる機会があれば、実際のオフィスに訪れてみて、働くエンジニアの様子や、ワークスペースの環境などを見ることをおすすめします。良い仕事は良い環境、そして良い人から生まれます。